手考足思

日々かんじることを綴ったもの

手仕事

友人に料理を教えた。

教えたといっても、ふだんわたしが作っているもの、わたしのやり方をシェアしただけなのだけれど、彼女の包丁さばきを見ていて気になったことがある。

手の動かし方だ。

彼女はふだんまったく料理をしないと言っていたから、手つきがぎこちないのは仕方ないのだけれど(だから習いに来たわけで)、手の感覚というのは料理においてものすごく大事だと思った。

 

そういえば調理の専門学校に通っていたとき、わたしは先生の手つきにいつも見とれていた。

食材に塩をうつ。フライパンを煽る。パンを捏ねる。先生の手つきには迷いがなく、一定のリズムと型でもって調理を進めていった。

その手つきはうつくしく、静謐さをすら感じさせた。わたしもこういう手つきで料理が出来るようになりたいと授業のたび思った。

 

「プロと素人のちがいは再現性にある」と先生は言った。

品質(おいしさ)にバラつきがなく、いつ行っても一定の質をもった料理を提供できることが、お金を払ってもらう意味のひとつだと。

プロはそのうつくしい手つきで、作品の均質を担保しているのだと思う。

 

料理もそうだが、陶芸も手がもの言う仕事。

大学時代、あんなに身近にありながらほとんど真面目に取り組まなかったことに後悔しているけれど、まぁそれはそれとして、今のわたしがやりたいのは手仕事なのだとあらためて気づく。

 

 

自分の手で、意味のあるものをつくりたい。

自分にとっての意味、他者にとっての意味、その両側面を、わたしのつくるものには込めたいと思う。